弓木あき

Readings|一句鑑賞

風船をもらひしよりの手の弾み

/杉山久子

風船を手にした瞬間から、手はただの手ではなくなる。風船に引っ張られ、揺らされ、浮き立つものになる。ここで弾んでいるのは風船でもあり、手でもあり、そして同時に心でもある。

掲句は風船の色や、もらった側の表情を一切描いていない。しかし「手の弾み」という一語だけで、それらをすべて想像させてしまう。風船を得たあとの身体の変化だけを描くことで、むしろ喜びの全体が見えてくる。

また、「もらひしよりの」という中七が一句の核だ。受け取ったその瞬間から今に至るまで持続している、うれしさや胸の高鳴り。風船をもらった一瞬の喜びではなく、歩きながら、手に持ちながら、まだ続いている弾み。その時間感覚が、この句を生き生きとさせている。

杉山久子『栞』(2023年、朔出版)より。

2026年6月11日 弓木あき