弓木あき

Readings|一句鑑賞

星の窗新樹の窗ととなりあふ

/藤田哲史

端正で構造的な建築俳句。

まず印象的なのは、「窗」(まど)という語が、それぞれ別のものを切り取りながら反復されていることだ。「星の窗」「新樹の窗」。ひとつの建物の壁面に、二枚の窓が穿たれる。窓は内外を隔てる境界であると同時に、外の世界をひとつの枠に切り取る装置でもある。

しかも、「星」からは夜が、「新樹」からは夏の明るい昼が想起される。また「星」は天上、「新樹」は地上にある。夜と昼、天上と地上、そして遠景と近景とが、同じ「窗」という枠組みによって並置されてしまう。

そこで効いてくるのが下五「となりあふ」だ。窓と窓とが隣接している景はごく自然だが、掲句では前述の図式のように、「星」「新樹」という異なる時間や景を喚起する二項が同時に存在している。つまり、ここには現実をわずかに逸脱した、虚構がうまれているのだ。「となりあふ」と終止形で言い切ることにより、異なるふたつの世界が言語の虚構性のうえで接続された。反復される「窗」という漢字表記も端正な面をなし、まさに、言語による建築物といえるであろう。

『天の川銀河発電所』(2017年、佐藤文香編、左右社)より。

2026年9月16日 弓木あき