弓木あき

Readings|一句鑑賞

さくら咲く氷のひかり引き継ぎて

/大木あまり

「さくら咲く」という春の出来事が、「氷のひかり」を引き継いでいる。そうした異なる季節の「ひかり」を一続きのものとして結んだ、大胆で繊細な把握の一句だ。

その大胆さは、冬と春という異なる季節を、「引き継ぎて」と連続的に捉えたところにある。氷は冬のものであり、桜は春のもの。時間の上でも季感の上でも離れた二つを、この句は「ひかり」を媒介にして繋いでしまう。冬から春へ、季節はただ移り変わるのではなく、前の季節の「ひかり」を確かに受け取っている。

そして繊細さは、その受け渡しを、つかみどころのない「ひかり」という語に託した点にこそある。「氷のひかり」は、冷たく澄んで硬質で、透明だろう。対して、「さくら」の「ひかり」は、きっとやわらかく淡い。しかも「引き継ぎて」と言いさし、完了させない。桜が氷から「ひかり」をどのように受け取ったのか、それがこれからどうなるのかは、読者に委ねられる。

そして、引き継がれてゆくのは「ひかり」だけではない。氷はいずれ溶け、桜もやがて散る。どちらも消えることを宿命づけられた、はかないものだ。消えゆくものが、別の消えゆくものへと「ひかり」を託してゆく。どこか翳りを抱えているからこそ、掲句は忘れがたく美しいものとなっている。

大木あまり『セレクション俳人4 大木あまり集』(2004年、邑書林)より。

2026年7月16日 弓木あき