Readings|一句鑑賞
大切なひとが年寄る星祭
「大切なひと」、その人が「年寄る」。歳をとってゆく。若く健やかであってほしいと願う、まさにその人が、避けようもなく老いてゆく。その事実が動かしがたいものとして見えてくる。
「年寄る」という表現には、掲句のやさしさと痛みとの両方がある。「老いる」でも「歳をとる」でもない。年が寄ってくるという受け身のやわらかさがある。責めるでも嘆くでもなく、抗いようのない時間の訪れをただ「そういうもの」として受けとめている。大切だからこそ、その人の老いは切ない。けれど老いてゆく時間を共にいられることは、それ自体がかけがえのないことでもある。
そして季語は「星祭」。年に一度めぐってくる七夕の夜である。大切なひとの、一年また一年と重なってゆく老い、寄せてくる年波が、この星祭の時間と重ねられる。めぐる年ごとに、その人に年は寄り、星祭もまた訪れる。天上のはるかな時間のスケールのなかに、大切なひとと過ごす、かぎりある地上の歳月が取り合わせられている。
藤村真理「からり」(「俳句研究」2002年11月号)より。
2026年7月7日 弓木あき