弓木あき

Readings|一句鑑賞

うすらひの端は水とも光とも

/奥坂まや

描かれるのは、薄氷の「端」という小さな境界。そこには、水の世界に冬の名残が戻ってくる気配と、同時にやわらかであたたかい春の光が差し込んでくる気配とがある。固体と液体の境界であり、冬と春の境界でもある。

表記に着目すると、まず「うすらひ」とひらがなに開いたことにより、氷の硬さや鋭さではなく、淡く、いまにも消えてしまいそうな姿が想起される。まるで水のゆらぎのようであり、光にほどけてゆくようでもある。「〜とも〜とも」というリフレインがそのゆらぎを音の上でも表現する。さらに、「〜とも」のあとは省略され、不確かなまま、未完のままに保留される。

「うすらひの端」は、ほとんど氷でありながらもう氷ではなく、もう水でありながらまだ水とも言い切れない。そして光るものでありながら、光そのものではない。その曖昧な美しさを、表記と調べによって曖昧なままに提示している。

奥坂まや『うつろふ』(2021年、ふらんす堂)より。

2026年6月28日 弓木あき