弓木あき

Readings|一句鑑賞

夜焚火に金色の崖峙てり

/水原秋櫻子

冬の夜の闇と、焚火の立ち上がる炎。崖の岩肌がその炎に照らされ、金色の壁となって現出する。

鮮烈なのは、「峙てり」という結びだ。「峙つ」という力強い動詞の選択。そして、動作や作用が持続しているさまを表す助動詞「り」。こうした文語の措辞により、「金色の崖」という神聖で幻想的な光景は、読み終えたあともなお読者の眼裏に屹立し続ける。

色彩について考えるたび、炎ほど豊かな表情をもつ物質は、他にないのではないかと心奪われてしまう。掲句の場合、炎そのものの色ではなく、照らされた崖の金色を言い当てることで、かえって炎の様相を想像させている。

水原秋桜子『葛飾』(昭和五年、馬酔木発行所)より。

2026年6月8日 弓木あき